2007/10/01  メンテナンス部門A


コラム145 
 メンテナンスについて引き続き書いてみる。
 現実、現場は作業者にはとてもきびしい。ヘルメットの着用だとか、朝の体操だとか、
工程会議、中間検査などなど。
 1棟の家を仕上げる日数まで決められる。


 もう、ここまでくると真綿でなどというレベルではなく、ピアノ線でぐいっとやられる感じである。
 親会社はしっかり経費を取って社員にはボーナスまで出すのに、現場で働くものには
派遣社員よりも条件がきついのだ。使い捨てパートというところか。


 賃金の総合計と日数まで管理された中で彼らはどうするのか。
 こうなると、働くものは生き抜く知恵を発揮しだす。
 いくら工期がなくても他人は雇えないから自分で夜遅くまで現場でたたくのだが、その時間
まで監督がいるわけではない。
 監督は忙しい会社ほど何軒も掛け持ちさせられている。目利きの範囲と言っても限界が
出てくる。その辺が抜け道につながってくる。


 プロとアマチュアという言い方をすれば大工(作業者)はプロだ。一方、監督というのは現場経験
が多いというのは業界の中でそんなにはいない。つまり、アマチュアに近い。
 プロとアマがぶつかれば、100%プロが勝つ。


 現場ではフィニッシャー(エアで打つステープラのお化けみたいなもの)と切断機(要は性能の良い丸のこ)
で殆どの作業が出来てしまう。
 あとは接着剤の力を借りる。
 当然、どういうところで手を抜くかは想像がつく。接着剤を省く、水平・垂直を計らない、留める箇所を
少なくする・・・・などなどである。


 床だって多少のゆがみはわからない程度に無視する。前項でも書いたが、素材が悪いのは自分の
せいではないからこれも無視。
 これで引き渡しに何もなかったら奇跡に近い。
 だから、メンテナンス(尻拭い)班は必要になってくるのだ


2007/09/15  メンテナンス部門@


コラム144 
 メンテナンスの本来の意味は維持管理ということだが、現実は「工事の尻拭い」という
意味合いが強い。


 大手の電気製品の会社なら、例えばテレビ画面の不具合だとか通常の使用で特別な
ことをやらないのにおきた不具合を修理してもらうとかはメンテナンスという意味でとれる。
こと、住宅の場合はちょっとニュアンスが違ってくる。


 工事そのものを進めていく上で、施工する大工さんというのは面積あたりいくらという賃金
で契約する。いわゆる「手間請負」である。
 たとえば、支給された木材のなかに傷などがあっても、それは監督などが気付いて施工前
に交換しなければ、作業員である大工さんは構わず仕事を進めていってしまう。傷物・不良
なものを支給してきたのは俺の責任ではないということだ。


 こうなると共産圏のガタガタなインフラと同じだ。ジャガイモを掘る人と運ぶ役目の人がいて、
掘る人は畑の脇まで出せばそれで仕事は終わり。イモが腐ろうと関係ない。運ぶ人が
来ないのは俺のせいではないと言う理論だ。


 なかには直前にわかったものは取り除いておいたりする人もいるが、今の世の中
せちがらい。部材は必要な分しかはいってこないのである。次にその部材が手配されて
入るまでに自分の作業が止まってしまう。その遊びのなった部分は保障されない。
結局は正直にやるものは損をするようになっている。
 また、誤って作業中につけてしまった傷などもうまく隠してしまう。
他の世界では考えられないことだが現実はそういう進行で現場は出来ていく。


 こういうシステムをとっているところ、いわゆる低価格政策をとっている業者ほど
検査回数が多い。それでわが社はきちんとしていますというパフォーマンスをするのだ。
 それでもついてしまった傷が消えることはないから、見つかった段階あるいは引渡し
前で補修となる。
 施工した人は「自分がつけた傷ではない」と言い張る。
もし、これを認めると自腹を切らされるから絶対やったとは言わない。


 監督もつきっきりで見ているわけではないし、たくさんの下請け業者もはいるから
強いことは言えない。
 傷でなくとも現場で施工ミスをやったら、今は100%施工者(大工)が修復させられる。
(まあ、当然と言えばそうなのだが)

 そこで修理してくれと言われるが、決まった手間だけでやらされた上に修理まで
させられて賃金はもらえないとなると丸損になるから、これまた、自分らでは絶対修理
はしない。現実にこういう修理には元請の会社は、賃金は出さない。


そこでメンテナンス専門(尻拭い)の部門が必要になってくる


2007/09/01  ホームセンターと材木屋


コラム143 
 今の時代、広大な駐車場と売り場を持つホームセンターは我々にとって脅威となった。
しかし、すべてにわたってホームセンター(HC)が優位かというとそうではない。そして、
この特徴の違いを理解している人も非常に少ない。


1 営業時間の違い
2 品揃え・専門性
3 売り渡し方法の違い
4 配達の違い
5 工事の目利き


ちょっとあげただけでもこれだけの項目がある。


 ホームセンターの開始・終了時間は、9:30〜19:30とずれこむ。
我々は朝7:00ころから店を開けているので、HCでは早事がきかないと店に寄る人もいる。
夜は19:00くらいまで店にいるから、全体的に見ればこちらのほうがずっと営業時間が長い。


 品揃え・専門性 
 ホームセンターは、品物は一般向けのものが多い。我々は建築業者への資材販売だから、
品揃えの主体が違う。
 専門性は、我々は昔から木を扱ってきたので、商品知識と的確なアドバイスははるかに
高いものを持っている。


 売り渡し方法
 我々はもともと業者の便宜を図るため、掛売り・配達つきは当たり前として、やってきた。
一方、HCは引き取り・現金が主だ。この違いは価格の差に多少出るのは仕方がないことだ。


 配達の違い
 これは価格との関連もあるが、一般に顧客は実働の大工さんだ。大工さんは一日の
手間が16.000円ほどである。単純に時間給で言えば、2.000円/時ということだ。
 これらの高給取りの方がトラックを持って、現金で引取りをして、二時間かかったと
すると4.000円以上差が出ないと元が取れないことになる。
 仮に石膏ボードが一枚あたり50円安かったとすると、80枚以上自分で運んで、しかも
二時間以内に作業を終わらせないと元が取れないことになる。
 まず、こういうことは不可能だ。これを正確に計算している人は殆どいない。
しかし、まずは価格ありきで「お前のところは何円高い」とくる。
 こんなことをやっているなら、材木屋に配達させて、「ここへおいといてくれ」といって、
自分は大工の作業をはかどらせたほうがよっぽど効率が良い。


 工事の目利き
 最近のHCはリフォームの工事まで請け負う。といっても、専門の工事担当者がいるところは
少ない。殆どが外部発注で、見積もりだけは自分の看板でやるが、実際の工事は下請け
まわしになっている。
 その下請け業者もピンキリで当たりはずれがかなりある。


 実際にこの近くのHCで玄関前のブロック工事を依頼したら、なんと鉄筋ナシで積まれて
あやうく大きな事故になるところだったと言う人がいた。
 私がちょうどこのお宅に訪問中で、玄関先で話していたときに建て主さんがこの出来上がった
ばかりのブロックにちょっともたれかかった。そのときだった。
「あっ」となって、積んだブロックがグラリ。


 私と二人であわてておさえて事なきを得た。あとから考えれば心臓がドキドキものだった。
建て主さんは怒って、即刻担当にやり直しを言い渡した。


 当初、基礎部分はすでにあったのだが、そこから鉄筋が出ておらず、施工については
刺し筋(コンクリートに穴をあけて十分に鉄筋の保持力をつくるもの)方式でやりますから不安は
ありませんという話だったという。建て主さんは工事のときに立ち会ってみていなかったが、
それは当然やってあるものと思っていた。


 当初の下請け業者は建て主が見ていないのをいいことにして、刺し筋をほとんど行わなかった。
こういう隠れてしまうものには気持ちが寛容なのか、希薄なのか、それとも悪質なのか。と言って
いられる場合ではない、実際はとんでもない参事を招くことになる。


 現実にここは1mくらいの落差があって、下は駐車場になっている。その側に子供でもいて
直撃をくらったら即死かもしれない。大人でも支えきれないほどのブロックがわーっと一気にくるのだ。
 まともな施工に当たればまだいい。よもやこれが50%の確率ではずれかもしれないなどとは
考えたら怖くて頼めないだろう。知らぬが幸せだ。


 もちろん、二度目のやり直しのときは立ち会って写真を撮っておいたという。
「大きいからすべて優秀とは限らない」という教訓だ。


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          主催者   久保 敏雄